背景

がんで亡くなる方は世界で800万人以上を数え、今も増え続けています(IHME, Global Burden of Diseases)。日本ではがんになる確率は生涯で男性が62%、女性が47%、がんで死亡する確率は男性が25%、女性が16%と言われています(国立がん研究センターがん情報サービス)。  

これに対して治療法は、長い間、「手術療法」、「放射線療法」、「細胞傷害性抗がん剤療法」が中心でしたが、近年、「免疫チェックポイント阻害薬」が登場して免疫療法が加わり、大きく変わりつつあります。  

「免疫チェックポイント阻害薬」は免疫応答のブレーキを解除して、T細胞による抗腫瘍効果の発揮を促進します。実際、固形がんに対して、副作用も少なく、劇的な効果があることが知られています。  

しかし薬の価格が高い一方で、効果のある人が少ない問題点もあります。がん種により異なりますが、非小細胞肺癌で20%、頭頸部がんで15%、食道がんで15%、腎がんで25%、メラノーマで35から40%など多くのがんでは低い奏効率です。(ただし一部のホジキンリンパ腫、癒着性メラノーマ、メルケル細胞腫は高く、それぞれ87%、70%、56%と言われます。)

この奏効率の低い問題点を解決するため、

  • ■ 他の治療法と合わせた併用療法を開発する
  • ■ バイオマーカーを用いて効果のある患者を投与前に選別する、つまり患者の層別化を行う

などが重要と考えられています。またバイオマーカーの利用についても、測定用の検体としてはバイオプシーや手術で得たがん組織を用いない簡易な方法の開発が待たれます。  

このようなバイオマーカーの発見のために現在取られている方法は、多くの患者のデータを集め、予備的な知見や仮説に基づいて特定の項目の測定を行い、統計的有意差が見いだされるものを発見する、というものです。測定項目の決定は、訓練されているとはいえ人間が行うものなので、感覚的な判断、偏り等は避けられません。また、この過程には長時間を要し、何らかの発見が保証されているわけではないので、効率のいいものとは言えません。現在、ビッグデータから何らかのインサイトを得る過程について新たな数理的取組が導入されつつあります。